豆知識
2025/01/08
めっき素材の厚さが厚いほど亜鉛付着量は増える!JIS規格も解説
常識にとらわれない発想と技術で、お客様の期待を超える新しい価値を創造し、溶融亜鉛めっきを支えるベストパートナーとなることが当社の使命です。
そのためにも、お客様とのコミュニケーションを大切にしながら、今後も、皆様からの要望をもとに、製品の開発や改善、サービスに活かしてまいります。
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溶融亜鉛めっきは鉄鋼製品の耐食性を高める表面処理として有名です。めっき素材の厚みによって、亜鉛付着量はどのように変化するのでしょうか?
本記事ではめっき素材の厚みと亜鉛付着量の関係性についてわかりやすく解説しています。
亜鉛付着量の調整方法やJIS規格についても触れていますので、詳しく知りたい方は必見です。
めっき素材の厚さと亜鉛付着量の関係性
めっきを施す素材の厚さと亜鉛の付着量には以下の関係性があります。
それぞれの関係性を少し掘り下げて確認していきましょう。
亜鉛付着量が多いほど耐食性は上がる
一般的に亜鉛付着量が多いほど、製品の耐食性は上がります。
これは亜鉛が鉄を守る犠牲防食作用を持っているためです。
犠牲防食作用とは、亜鉛が鉄よりも腐食しやすいという性質を利用したもので、仮にめっき面に傷が入っても亜鉛が先に溶けだすことで鉄を保護します。
亜鉛は犠牲防食作用によって少しずつ消耗していき、かなり消耗が進むと上の画像のように、合金層が露出して薄くさびた状態に見えるようになり、耐食性が低下します。
つまり亜鉛付着量が多ければ多いほど、消耗するのに時間がかかるので耐食性が上がるというメカニズムです。
亜鉛の消耗量の目安は1年に1μm程度ですので、50年持たせようと思うと、ざっくりとした計算にはなりますが、50μm以上の厚みで亜鉛付着量を設定する必要があります。
ただし、過剰な亜鉛の付着はコストや加工性に影響が出るので、製品の使用環境や目的に合わせて適切な付着量を設定することが大切です。
めっき素材が厚いほど亜鉛付着量は増える
溶融亜鉛めっきを施す素材が厚いほど、亜鉛の付着量は増加します。
これは素材の熱容量と亜鉛との化学反応の特性が要因です。
めっき素材が厚いほど、めっき生成に時間がかかるため、めっき浴への浸漬時間が長くなります。
結果として亜鉛の付着量が増加するのです。
めっき素材が厚いと熱容量が大きくなるので、めっき引き上げ後の冷却速度が遅くなります。
結果的に亜鉛との反応時間が長くなり、付着量も増加します。
めっき素材の厚さによる亜鉛付着量の変化
上の表はめっき素材の厚さと亜鉛付着量を具体的な数値で表したものです。
素材の厚さが厚くなるにつれて、亜鉛付着量が増加していることがわかります。
ただし、厚みが倍になっても亜鉛の付着量は倍にはなりません。
耐食性を上げたいからと言って、溶融亜鉛めっきの処理時間を長くして無理に亜鉛付着量を上げようとすると、反対にめっき部がもろくなり、品質が劣化する可能性もあるので注意しましょう。
亜鉛付着量を管理する方法
一般的にめっき素材が厚いほど亜鉛付着量は増えますが、使用される環境や用途によっては亜鉛付着量を管理して過剰な付着を防ぐ方が、経済的にも品質的にも有利な場合があります。
亜鉛付着量を管理する方法は以下のとおりです。
このように亜鉛付着量はめっき条件の調整や物理的な方法での調整が可能です。
まずは使用される環境や用途に合わせて適切な亜鉛付着量を決めるようにしましょう。
JIS規格と亜鉛付着量について
溶融亜鉛めっきの品質は、以下2つのJIS規格(日本産業規格)で定められています。
2021年12月20日付けでJIS H 8641とJIS H 0401は改定されています。
これに伴い、めっき素材の厚さと亜鉛付着量の規定に一部変更がありました。
ここからはJIS規格の改定前後について触れていきます。
改定前は亜鉛付着量が要求される品質特性だった
溶融亜鉛めっきの規格は、以前までは亜鉛付着量が要求される品質特性でした。
旧規格の記号と亜鉛付着量の参考例は以下の通りです。
HDZはHot Dip Zincの略で溶融亜鉛めっきを表しています。
その後の数字が1平方メートルあたりの亜鉛付着量を表していたと覚えておくとわかりやすいでしょう。
しかし、めっき皮膜の膜厚を測定して亜鉛付着量を算出する方法が普及しており、実態としては膜厚での管理が一般的となっていました。
改定後はISOに合わせて膜厚が要求される品質特性になった
2021年12月20日付けの改定で、膜厚が要求される品質特性に変更されています。
国際規格であるISO1461:2009では以前から膜厚基準であったことも、改定の背景だと言えるでしょう。
画像引用:一般社団法人日本溶融亜鉛鍍金協会「溶融亜鉛めっきの規格」
上の表は新旧の規格を比較したものです。
新規格では「HDZT 〇〇」となっており、数字が膜厚(㎛)を表すようになりました。
この中でも混同しやすいのが旧規格のHDZ 35と新規格のHDZT 35だと思います。
HDZ 35は亜鉛付着量が350g/㎡でめっき膜厚の参考値が49㎛以上です。
膜厚で考えると、新規格のHDZT 49が相当品となります。
このように旧規格と新規格の数字が何を表しているかに着目すれば、混同せずに正しく理解することが可能です。
溶融亜鉛めっきの補修は高濃度亜鉛末塗料がおすすめ
溶融亜鉛めっきの亜鉛付着量はめっき素材が厚くなるほど増加します。
亜鉛付着量が多いほど耐食性は上がりますが、過剰な付着は経済的にも品質的にも良くないため、使用する環境と用途に応じて適切な付着量になるように調整が必要です。
溶融亜鉛めっきの耐食性は高濃度亜鉛末塗料による補修によって維持することもできます。
弊社では乾燥塗膜中の亜鉛含有量が92%のスーパージンクと96%のジンクZ96の2種類を高濃度亜鉛末塗料としてラインアップしております。
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